2021年1月31日

令和三年 初護摩祈祷

行政書士・中小路隆哉氏による講演

初護摩祈祷終了後、行政書士・中小路隆哉氏による『終活について』の講演が行われました。

以下に講演内容を掲載いたしますので、ご一読ください。

 熊谷市の行政書士をしております、中小路隆哉と申します。
 私はお寺専門の行政書士ということで、お寺の運営のことや、お墓のことを中心に活動させていただいております。
 本日はよろしくお願いいたします。

 皆様は「終活セミナー」というものにご参加されたことはございますか?
「終活」というと、例えば「争族にならないように、事前に遺言書を作っておいたほうがいい」、「事前に準備をすることで、相続税が少なくできる」といった内容のお話が多いです。
 本日は私がお預かりした実際の案件についてお話することで、より身近な「終活」について、少しでも皆様のご参考にしていただけたらと思います。

 昨年の11月の下旬に、とあるお寺さんから「お檀家さんの中で、身寄りのない方がいらっしゃる。その方(以下Aさん)が危ない状況なので、すぐに来てくれないか」といったお電話をいただきました。
 お寺に向かいお話を伺うと、そのお檀家さん(Aさん)は昭和二十年生まれの女性の方で、五年前にご主人を亡くされてから一人で生活をされていました。身寄りがないということなので、自分が亡くなったあとのことを、全てお寺にお願いしたいということをおっしゃられていたそうです。
「お寺に全てお任せしたい」といった旨を記した書類がないか尋ねると、Aさんは市販の便箋に、「自分が亡くなった後のことは、全て菩提寺である〇〇寺にお願いします」という書き置きを、冷蔵庫の中に残されていたそうです。

 いろいろと書類を作っておいたとしても、それが発見されなければ意味がありません。
 ですから、必ず片付けるであろう冷蔵庫に便箋を残しておけば、確かに見つけてもらえることになるでしょう。
 ただ私どもが仕事をするにあたって、「亡くなった後のことを全てお任せします」という一文だけだと、どの範囲で任されたのかがはっきりしません。
 そこで私の方で改めて書類を作り、Aさんがいる病院へと伺いました。Aさんは、確かにお寺にお任せしたいと意思表示されたのですが、手に力が入らないため署名ができませんでした。
 なんとか署名をしようと病院の職員の方にも協力してもらったのですが、あまり無理をするとAさんの精神状態が良くない方向にいくかもしれないということで、最終的に署名をいただくことは断念することになりました。

 それで私が何をしたかというと、まずはAさんに法定相続人の方がいらっしゃるかどうかをはっきりさせることにしました。
 まずは菩提寺にご説明し、役所に行き、Aさんの出身地である栃木県の本籍地に行きまして、Aさんに本当に相続人がいないかを確認したところ、Aさんは三人兄弟のご長女さんで、下に弟さんと妹さんがいらっしゃることがわかりました。
 妹さんは特別養護老人ホームに入居されていて、意思表示が厳しい状況であることが容易に想像できました。
 弟さんはすでに亡くなられていたのですが、その息子さんが二人いらっしゃいました。

 そこで私は、弟さんの息子さんに「叔母さんが非常に厳しい状況なので、至急連絡をいただきたい」といった内容のお手紙を出しました。
 そうすると数日後にお電話があり、全てお寺の方で進めくださいというご意思を確認できました。
 それがAさんのお亡くなりになる三時間前の出来事で、ギリギリではありましたが、なんとかトラブルなく相続手続きができることになりました。

 亡くなられた後のことですが、死亡届を提出して火葬許可証を取らなければなりません。通常葬儀屋さんがそのあたりの手続きは全て段取りをしてくれて、円滑に進められると思うのですけれど、実は死亡届というのは、誰でも提出できるわけではありません。
 親族以外となると、例えば賃貸住宅の大家さんであるとか、後継人であるとか、そのような方々しか、死亡届を提出することはできません。

 いまの話のAさんは、亡くなられたご主人の弟さんのお連れさんが、お寺で把握している一番近いお身内の方でした。
 その方に死亡届の届け人になってもらおうと思って、役所に死亡届を提出したのですけれど、役所の方から「その人は死亡届の届け人にはなれない人です。至急別の方を探してください」と言われてしまいました。
 翌日の午後二時にもう火葬場の予約が取ってあるという状況だったので、私も慌てまして、先程申し上げました甥っ子さんに連絡をとって事なきを得ました。

 相続というと財産分けであるとか、相続税であるとか、そういうことにスポットが当たりがちですが、実際相続税がかかるのは、全相続のうちの5%〜8%といわれておりまして、大半の方が相続税はかからないものなのです。
 むしろ必要な時に慌てないように、円滑に手続きをすすめるため、どのようにすればいいかということにスポットライトを当てて、相続の準備をされたほうがいいということになります。

 最近では「エンディングノート」というものもございます。
 市販でも売っていまして、生前にご葬儀に呼びたい方を書いておくとか、財産をある程度記しておくことができるものです。
 ですがこの「エンディングノート」も誰かが存在を知っており、そのご意思を実現できる方法を整えておかなければ、書く意味がありません。

 私がお伝えしたいのは、自分が亡くなった後のことを任せられる人を、誰か一人で結構ですので見つけて頂いて、その方に自分のご意向をお伝えいただきたいということです。
 いまコロナ禍でソーシャルディスタンスを取ろうと言われていますが、その方とは心のソーシャルディスタンスをゼロにしていただき、ぜひご自分のことをお話していただきたいと思っております。
 それが書面なのか、口頭なのかは問いません。まず自分が亡くなった後のことを、信頼して任せられる人を作っておいていただきたいのです。

 またお寺というのは、基本的にいろいろなところとお付き合いがございます。我々、行政書士も同様で、多方面とのつながりがありますので、亡くなった後のことをお引き受けできる有力な存在となります。
 自分の財産であるとか、家族のことを、どなたかにお話するのは抵抗があるかと思います。言いたいこと言いたくないこと様々ありますし、話をお受けする側も難しいことはできない場合もあるかと思います。
 そういった面でお寺の方をご活用いただき、ご葬儀などの相談だけでなく、ご葬儀の外側にある「終活」についても、ぜひお寺にご相談ください。
 長福寺であれば、私のほうが熊谷から馳せ参じてお話をお伺いしたいと思います。

 相続については、こうという正解はございません。
 百人いれば百通りの相続と相続対策があります。
 ぜひ皆様の声をお伺いして、その方にとって一番有効な相続対策を考えさせていただければと思っております。

 それから、例えば自分の財産をどのあたりまで人に話していいのかということがあるかと思います。
 たとえ自分のお子さんであっても、自分の預貯金に関することとか、財産に関することを、細かく話すことはなかなか抵抗があると思います。
 手続きの専門家から言わせていただくと、不動産については「寄居町にある」といったように、市町村さえ特定できれば大丈夫です。そこまでわかれば、その方の財産についてはこちらで調べることができます。
 預貯金等についても、「〇〇銀行にある」といったように、金融機関さえわかれば問題ありません。我々手続きの専門家が、その方が残されている財産を調べることができます。
 ですからどうぞご安心して、そのあたりまでのことを、自分の信頼される方にお話いただければと思います。
 そして、今後の相続対策についてお考え頂ければと思います。

 個別になにかご相談されたいといったことがございましたら、私の方までご相談ください。よろしくお願いいたします。
 本日はありがとうございました。

長福寺では、お墓をお持ちでない方でも安心してご供養いただけるよう取り込んでおります。
詳しくは、「永代供養葬」を御覧ください。